咲穂は、海沿いの街で生まれ育ち、とある町に嫁ぐことになった。
咲穂が嫁いだ町は春になると、大きな桜の木でまるでトンネルみたいに
綺麗な花を咲き誇る場所だった。

結婚してから、3年後のことだった。
咲穂は、ついに念願の1人目を妊娠したのだった。
待ちに待った赤ちゃんで、夫婦ともどもとても喜んでいた。

つわりは思ったよりも、ひどくなく穏やかな日々を過ごしていた。
またたく間に安定期を迎えた、小さな命は咲穂のお腹の中ですくすくと
育っていった。お腹はどんどん大きくなっていき、妊婦さんらしく
なってきた。今日も、夫を見送ってからいつもどおり大きなお腹を
抱えながら家事をしていた。

少し疲れた咲穂は、ソファーに腰掛けてゆっくりとしていた。
お腹の赤ちゃんは、元気よく動いて咲穂を癒していたのだった。
家事が終わると、いつもの日課である散歩に出掛けた。
今日は、役所に行く用事があって、いつもより30分くらい長く歩いた。
暑さも和らぎ、ちょっと長い距離を歩くには最適な天気だった。
時々、途中にある公園に立ち寄り木陰にあるベンチに腰掛けて
ちょっとだけ休憩した。ベンチに腰掛けていると
お腹の赤ちゃんは元気よく動き、大きなお腹は波打つようだった。

役所への用事と、日課の散歩を終える夕方になった。
家に帰ってから、ちょっとだけ休憩して咲穂はご飯の支度をして、
ソファーに座って大きなお腹を優しくさすりながら、夫の帰りを
待っていた。咲穂はお腹の赤ちゃんにこう話し掛けた。「パパ、
帰ってくるの遅いね〜」そう話し掛けた数分後に夫は帰ってきた。
咲穂の夫は、咲穂の大きなお腹を優しく撫でると元気に
動いてくれたのであった。

それから2ヶ月後…、咲穂は臨月を迎え出産まであと少しとなった。
出産予定日はクリスマスの前後だった、咲穂はクリスマスに産まれると
いいなと思っていた。クリスマスイブの夜のことだった、
いつもとは違う痛みが襲って来たのだった。咲穂は陣痛が強くなる
前に産婦人科へ向かった。陣痛が始まってから数時間後のちょうど
日付が変わる数時間前に咲穂は分娩室に入った。しばらくすると
元気な産声が響いた、咲穂は元気な男の子を出産したのだった。

咲穂は、「陽向」と名付けたのであった。咲穂にとって素敵な
クリスマスプレゼントになったのであった。


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